2007年5月、首都劇場で行われた話劇”駱駝祥子”をみにいきました。

舞台のバックは北京の城壁。苦しく貧しく、残酷なまでに生きることが難しかった当時の庶民の生活の厳しさをグレー一色でつくられた城壁の灰色が現しているようでした。舞台背景は最初から最後までこの城壁だけ。最初ではハト笛も聞こえてその当時の雰囲気が全体に広がってきて、城壁のある暮らしというのは、こういうのだったのだろうなあ〜と想像がふくらみます。

私の中での駱駝祥子といえば、映画版”駱駝祥子”。張豊毅 斯琴高娃主演のあの映画は、当時の悲惨な庶民の生活をストレートに心に訴えかけてきて、見終わった後はしばらくあの世界からでられませんでした。

今回の舞台版は、あの映画と比べてしまうと虎女がちょっとかわいすぎ?笑 ずうずうしさに迫力がなく、あの映画版の斯琴高娃のふてぶてしい虎女には、

「祥子ってなんて不幸なの?」

と心底同情してしまったほどでしたが、今回の虎女は小福子とも最後まで仲がよく愛らしい虎女で、ちょっと味気なかったですね。やっぱり斯琴高娃のあの強烈なインパクトには誰も勝てない・・・ということでしょうか。

描かれているのは、当時の貧しい市民達の一生懸命働いて地道に努力して生きていっても、それでも貧乏であるがために追われる不幸。どうしようもない絶望感が前面にあふれてきてしまう作品ですが、でも、最後に「会いにくる」といって別れをつげた祥子を、城壁のところから必死に見送る小福子の姿に、少しだけ希望の光がみえたような気がしました。
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