有吉玉青 著
「キャベツの新生活」は、はじめ”ふざけた題名・・”と思って新聞の解説欄でみつけたんですが、著者が有吉さんとみて解説を読んでみると、どうにも読みたくなってしまってすぐ買い求めました。

一番最初に読んだ時の感想は、逆の意味で勇気付けられるというか新しい発想をさせてもらえるというのを、すごく感じましたね。一番心に残った言葉は、

”人は生きてても死んでいることがある。励ましの言葉の根底には人生は楽しく、充実させなければいけないとでもいうような思想が流れている。人生は楽しくしなければいけないのだろうか。楽しくあるべく努力をしなければいけないのだろうか。その努力が楽しくないとしたら?人生はその時その時の気分にまかせてだらだらと生きるのではいけないのだろうか。”

という文章でした。何かつらいことがあったりした時、私なんてそこから立ち直ることだけを考えてしまいますが、この本をよんで「そうか。発想の転換ってやつで、立ち直らなくたって別にいいじゃないって考えたほうが、楽になれるときもあるかもしれない」って思いました。自分自身で、こうするべき、こうあるべきって思いつめてると他の発想は浮かばないものですが、自分の中でそういう道みたいなのを勝手に作る必要はないんですよね。

恋愛小説ですが、男女のかけひきとかとは違ってもっと淡々とした感じで言葉がつづられてます。がんばれとかそういうことは一切書いてないのにもかかわらず、なんだか妙に元気をもらえる小説だな、と強く思いました。

ただ、最初は一気に読んでしまったのもあったのですが、なんとなく題名から感じるようにファンタジーチックなお話しだと勝手に解釈してて、だからちょっとつじつまがあわないというか、この展開はなんなんだろ?と思うところがあっても、あまり深くは考えて読んでませんでした。

二回目読んで、まさに目からうろこ。ファンタジーどころじゃない、そういうことじゃないんだ、と根本的に自分のとらえ方が甘かったことに気づかされました。「有吉さんがここで伝えたかったのはそういうことじゃなくて、私が勝手にファンタジーだと解釈してただけだったんだ」と思い知らされましたね。そうやって改めて読んでみると、確かに小説の所々に、解釈のヒントというものがたくさんちりばめられていました。

主人公のキャベツ達があつまる居酒屋”夢幻堂”や、店主”ユメ”さん、などなど。
く〜〜っ、そういうことだったのか・・・となんだか非常に奥の深い世界に気付かされた、そんな感じでしたね。

二回目読んで深く深く心に残った言葉は、主人公のキウイちゃんが

”彼が運命の人だと思ってた、でも結ばれなかった。”

とキャベツにいう場面。そのキウイちゃんに対してキャベツがいった

”運命の人と結ばれるとは限らない。君の何かを変えたり考えさせたりして、君が、君自身のもっている運命と渡り合う、そこにかかわってくる人なんだよ。その意味で特別な人なんだ。”
”君の愛したやつは、君がいたことの証人なんだ。彼がいる限り、君は生きてる、残ってるんだ”

という言葉たち。

深い、深いです・・。それをキャベツにいわせるところが、なんともいえない。

最初読んだとき、どうしてこんなに重要な言葉たちを私はさらっと通り過ぎてしまったのか、謎ですね。
この本は何度も読みかえして、さらに自分にとって味わい深い小説となるのだと思います。
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