私が周旋(正しくは【王旋】)のことをしったのは、何日君再来 の歌をはじめてきいた時でしょうか、それとも故中薗氏の本 ”北京飯店旧館にて”を読んでからでしょうか。元々私は1930年代あたりの時代に強い憧れを抱いていて、できることなら当時へタイムスリップしてみたいと思うくらいなのですが、周旋が活躍したのもその当時の上海。

舶来品に囲まれた異国情緒たっぷりでありながら、東洋と西洋の入り混じった、モダンでお洒落でそして美しくも妖しい世界であった上海に現れ、その時代の上海を一世風靡した歌姫周旋。彼女の歌声は映像を通してしか聴いたことはありませんが、その可憐な風貌と甘い歌声はきっと今の世界でも世の人々を魅了したに違いありません。
大スターであった彼女ですが、私生活では次々と不幸におそわれ、若くしてこの世をさってしまいます。そんな薄幸のイメージの彼女を誰が演じるのかと思ったら、台湾の女優伊能静でした。

伊能静は同年代とあって、彼女が”我是猫”という歌をうたってたアイドル歌手だった頃からけっこう好きでしたね。勝気そうな一本芯が通ったようなそんなイメージでしたが、今回はその点が唯一私の中の周旋のイメージとズレていたところでした。

周旋が脚光をあびだした頃から舞台は始まり、厳華と結婚し、お兄さんの周履安が記憶喪失になって事故でなくなり、彼女が正気を失ってしまうまでの人生を描いていましたが、2時間があっというま。舞台としては、期待してた1930年代の雰囲気はまったくなく、ちょっとがっかり。
でも、舞台奥のスクリーンでは当時の上海の街の様子、「馬路天使」での周旋、そして結婚式での写真等が大きく映し出されて、それは本当に見ごたえがありました。
厳華と周旋が結婚した時の結婚写真では、ウェディングドレスが似合いすぎるほどにあってて素敵でしたねえ。あの時代の西洋の文化が入り混じっている東洋のスタイルっていうのは、なんともいえない美しさがあります。

中国の人にとって周旋の人気というのはいまだにすごいのだなあと思ったのは、会場が本当に満席で、どこも人でいっぱい!しかも10月には再演が決定しているそう。
上海保奇文化発展有限公司が出品してたのですが、かなり現代的にアレンジされていて、派手。
でもいやみな派手さじゃなくて、わりとスマートなつくりだったし、光を使った演出がけっこう効果的で、ぐいぐい引き込まれる劇でした。きらびやかでもあり、でも周旋そのものの映像をところどころつかったりして現代と過去をうまく取り入れた劇でしたね。
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