張芸謀監督の初アクション映画として、北京でもものすごい宣伝をしていたこの映画。
ジェットリーもさることながら、私は始皇帝役の陳道明のファンで、彼主演の”囲城”というドラマではまって以来、卒業論文も囲城にしてしまったくらい。
そんな事はいいとして、率直な感想は張監督の映像美は本当に溜息が出るほどだなという事。
今回の撮影にあたり、中国各地の景勝地にいかれたそうだけれど、自然の美しさというのはこんなに息をのむほどなのかな〜と驚くくらい。

ジェットリー演じる無名が、陳道明演じる始皇帝に謁見する所からこのお話は始まっていきますが、最初のうちは、話の流れと衣装の色合いに頭がついていかずむむむ?とおもいました。
が、なるほど、話の展開によって衣装が変わってくるのは視覚的に非常に判り易いんですね。

トニーレオン、マギーチャン、ジャンズイー、ドニーイエン、彼らとの戦いの映像や色彩は本当に素晴らしかった。ドニーイエンとジェットリーの雨が降る中での戦いは、雨の水一滴一滴がとてもリアルにうつったし、マギーチャンとジャンズイーの戦いは、一面に敷き詰められている枯葉の黄色い色が鮮やかで見事だった。

ただし・・・。アクションはなんていうか、上からピアノ線でつってるんだろうな〜という非常にありえない動作が多くて、その時代の人はみんなそうやって飛んでたんですか?!などといいたくなってしまうほど(笑)
ちょっとあれはいきすぎというか、なんというか・・・。そういうアクションやストーリーという全体の意味では同じアクション系ならグリーンディスティ二ーのほうがよかったですね。英雄の映像美の美しさは文句なしでしたけど。

ストーリー的にはなんともいえない感じですが、でも、最後のシーンは、現代でも通用することだな、なにもこの時代だからこういう結果になったわけじゃないだろうなという意味合いが込められてるようですごく考えさせられました。

ここで始皇帝を暗殺せずに城からでていくとしたら、自分がどうなるかくらい判りすぎるほど判っているのに、あえて自分のためではなく、国のためというとてつもなく大きい視野を持って出て行こうとする無名の顔は恨みとか恐怖とかそういうものをすべて超えたものすごく意思のある力強い顔をしてました。
本当に英雄というのはこういう顔つきをしてるんだろうなという、人間的に美しい表情でした。
そして、その気持ちにこたえるためには非常につらい決断をしなければならない始皇帝。

自分のためだけではなく、もっと広い視野の中で本当にするべきことはどういうことなのかというのを考えさせられる映画であるようにおもいました。

10年前、ジェットリーが張監督の作品にでたがっていたとき、人生を表現できる顔つきではなくまだこどもっぽいということで監督がOKをださなかったそうですが、10年たって今回監督がラブコールをして出演したジェットリーの顔はなるほど、たしかに男として人間としてすごく表情のある素敵な俳優さんの顔だな〜と思わせました。
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